効能又は効果
- HIV-1感染症
用法及び用量
- 通常,成人には1回1錠(エムトリシタビンとして200mg及びテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩として300mgを含有)を1日1回経口投与する。なお,投与に際しては必ず他の抗HIV薬と併用すること。
用法及び用量に関連する使用上の注意
- 1.
- 本剤はエムトリシタビン及びテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩の固定用量を含有する配合剤であるので,エムトリシタビン又はテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩の個別の用法・用量の調節が必要な患者には,個別のエムトリシタビン製剤(エムトリバカプセル200mg)又はテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩製剤(ビリアード錠300mg,以下「テノホビル製剤」と略す)を用いること。なお,エムトリシタビン製剤及びテノホビル製剤の使用にあたっては,それぞれの製品添付文書を熟読すること。
- 2.
- 本剤に加えてエムトリシタビン製剤又はテノホビル製剤を併用投与しないこと。
- 3.
- 腎機能障害のある患者では,エムトリシタビン製剤及びテノホビル製剤の薬物動態試験においてエムトリシタビンとテノホビルの血中濃度が上昇したとの報告があるので,腎機能の低下に応じて,次の投与方法を目安とする(外国人における薬物動態試験成績による)。
使用上の注意
慎重投与
(次の患者には慎重に投与すること)
- 腎障害のある患者[中等度及び重篤な腎機能障害のある患者では,エムトリシタビン及びテノホビルの血中濃度が上昇する(「用法・用量に関連する使用上の注意」,「重要な基本的注意」及び「薬物動態」<外国人における成績>の「3.腎不全患者」の項参照)。]
重要な基本的注意
- 1.
- 本剤の使用に際しては,患者又はそれに代わる適切な者に次の事項についてよく説明し同意を得た後,使用すること。
- (1)
- 本剤はHIV感染症の根治療法薬ではないことから,日和見感染症を含むHIV感染症の進展に伴う疾病を発症し続ける可能性があるので,本剤投与開始後の身体状況の変化については全て担当医に報告すること。
- (2)
- 本剤の長期投与による影響については現在のところ不明であること。
- (3)
- 本剤による治療が,性的接触又は血液汚染等による他者へのHIV感染の危険性を低下させるかどうかは証明されていないこと。
- 2.
- 本剤を含む核酸系逆転写酵素阻害薬の単独投与又はこれらの併用療法により,重篤な乳酸アシドーシス及び脂肪沈着による重度の肝腫大(脂肪肝)が,女性に多く報告されているので,乳酸アシドーシス又は肝細胞毒性が疑われる臨床症状又は検査値異常(アミノトランスフェラーゼの急激な上昇等)が認められた場合には,本剤の投与を一時中止すること。特に肝疾患の危険因子を有する患者においては注意すること。
- 3.
- 本剤を含む抗HIV薬の多剤併用療法を行った患者で,免疫再構築症候群が報告されている。投与開始後,免疫機能が回復し,症候性のみならず無症候性日和見感染(マイコバクテリウムアビウムコンプレックス,サイトメガロウイルス,ニューモシスチス等によるもの)等に対する炎症反応が発現することがあるので,これらの炎症性の症状を評価し,必要時には適切な治療を考慮すること。
- 4.
- 腎障害の既往,合併又はリスクを有する患者に本剤を投与する場合には,血中クレアチニン,血中リン酸塩の変動を注意深く観察し,投与法を調節する等の適切な処置を行うこと。また,腎毒性を有する薬剤との併用は避けることが望ましい。
- 5.
- テノホビル製剤の試験において,144週間の投与により腰椎と大腿骨頚部の骨密度の減少が見られている。骨密度の減少した患者の大部分は,投与開始後24~48週目にかけて発現し,以降は144週目まで安定していた。臨床的意義は不明であるが,病的骨折の既往のある患者又はその他の慢性骨疾患を有する患者では,観察を十分に行い,異常が認められた場合には,投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
- 6.
- 核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)3成分のみを用いる一部の治療は,NRTI2成分に非核酸系逆転写酵素阻害薬又はHIV-1プロテアーゼ阻害薬を併用する併用療法と比べて,概して効果が低いことが報告されているので,本剤と他のNRTI1成分のみによる治療で効果が認められない場合には他の組み合わせを考慮すること。
- 7.
- 本剤の有効成分であるエムトリシタビンの薬剤耐性を含むウイルス学的特性はラミブジンと類似しているので,本剤とラミブジンを含む製剤を併用しないこと。また,ラミブジン及びテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含む抗HIV療法においてウイルス学的効果が得られず,HIV-1逆転写酵素遺伝子のM184V/I変異が認められた場合,ラミブジン及びテノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を本剤に変更することのみで効果の改善は期待できない。
- 8.
- アジア系人種におけるエムトリシタビン製剤の薬物動態は十分検討されていないが,少数例の健康成人及び B型慢性肝炎のアジア系人種において,Cmaxの上昇を示唆する成績が得られているので,HBV感染症合併患者を含め,副作用の発現に注意すること。
- 9.
- 抗HIV薬の使用により,体脂肪の再分布/蓄積があらわれることがあるので,異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。
- 10.
- エムトリシタビン製剤の試験において皮膚変色が発現し,その発現頻度は有色人種に高いことが示唆されている。その原因は現在のところ不明であり,外国の規制当局からの指示により,発現機序等について検討中である。